80年代に起こった空前のバイクブームと一緒に登 場したレーサーレプリカカテゴリー。メーカーはどれだけレーサーに近づけられるかを競い、それらは若いライダーを夢中にさせた。XSR900 GPはそれらのデザインをオマージュするが、性能&機能は現代的。実際に走らせて、その乗り味をお伝えする。
※本記事は2024年6月24日発売のタンデムスタイルに掲載した記事をベースにしています。
懐かしさと新しさが融合した外観と性能

写真やジャパンモビリティショーなどで現物を見て、素直に“よくできているなぁ”は思っていた。筆者は80年代に高校生で2ストロークレーサーレプリカに乗っていたから、このスタイルをもっとも懐かしいと感じるドンピシャ世代ながら、これに歓喜したかと問われたら、それはない。“ネオレトロとして、まぁいいんじゃないのかな”というドライな感情があるだけだった。いわゆる“おっさんホイホイ”だけど、そのときはホイホイされなかったのである。

だけど、実際に目の前にすると“なかなかいいじゃない”と、可でも不可でもない中間近くにいた天秤の針が好意的な方向へ振れた。昔と比べてスイングアームが長い現代の車体姿勢の中にうまくレトロな雰囲気を落とし込んでいる。XSR900ベースで、フロント以外の造形はそのままなのにまとまりがいい。アッパーカウルは懐かしい造形そのままではなく、小ぶりなスクリーンを低い位置にマウント。忠実な懐古主義とは違い、その中に新しさも入る。ネイキッド版ではブラックだったフレームやスイングアームをシルバーにした懐かしい感じも含め、ノスタルジックと現代が融合。現行XSR900の開発時にGPが検討されていたと確信させるくらい違和感がない。

シートに腰をおろしてセパレートハンドルをつかむと、なかなかの前傾姿勢。80〜90年代にあったものすごいヤツより穏やかだが、最近のマイルド前傾に慣れた人だと、そこそこ前かがみが強いという感想になるだろう。が、スーパースポーツほどではない。個人的に前傾姿勢は好物で、ちょうどいい塩梅。自走北海道ツーリングに行けといわれても“OK”だ。
バーエンドミラーはちゃんと後ろを映し出すけれど、確認するためには顔を左右に動かす必要がある。ここが唯一気になったところ。視線の移動だけでは無理。その顔を動かす1秒程度のタイムラグがわずらわしい。安全面でもカウルマウントにし、視線移動で見える方がいいと思う。スタイルと機能性のはざまで開発者はこれを選択したのだろう。理解はするが手放しの賛同はしにくい。逆に小さなところで左右非対称の形状をしたウインカースイッチを気に入った。セパレートハンドルでも使いやすく、指の感覚だけで迷わずに操作できるから。

2014年にこの並列3気筒エンジンが登場したとき、エキサイティングなトルクでおもしろい反面、力の立ち上がりがやや急で素人お断り的なところがあった。そこからどんどん進化して、エキサイティングさを残しつつスムーズでどの回転数でも扱いやすく仕上がっている現行型の完成度は高い。エンジン特性とリヤサスペンションなどの関係でトルクが立ち上がるとタイヤがズルっといきやすかった初期型MT-09のトリッキーさはなく、スイングアームが入り込んでタイヤをグリップさせ踏ん張るトラクションのよさから、右手を多めにひねってエンジンパワーを開放していくのが実に楽しい。サスペンションは座った最初からやさしく動くけれど減衰が効いていて、前後にゆすられるピッチングが出にくく乗り心地もいい。そして前後サスペンションはフルアジャスタブルだ。使わないと損。自分の走り方や体型・体重に合わせられることの幸せ。

エンジンもサスペンションもスーパースポーツのようなハードさはなく柔らかいあたりだが、ペースを上げたスポーティな走りもこなせる。減速時も含めてタイヤがグリップしているのが手にとるようにわかり、ハンドリングは素直そのもの。レトロバイクの一部にある意図的な昔テイストの味付けは存在せず、スポーツバイクとして気持ちいい。低いカウルは風をうまく受け流し、上体をふせると目から上はスクリーンから出ていて視界を遮らず、風がヘルメットの上を通り抜け、前から押してくる力をほとんど感じさせない。
直接見て触れる前は心が動かなかったのに、結果として単なるレトロで終わらない走りのよさにホイホイされてしまった…。昔なんて知らなくてもホイホイされる魅力を持ったバイクであった。
XSR900 GPのライディングポジション&足つき
シート高は835㎜。ベースとなったXSR900より25㎜高い。この身長でなんとか母指球まで届く。ペグの位置は高すぎず低すぎずで、下半身に窮屈さはない。上半身はスーパースポーツより少しゆるいくらいの前傾姿勢だ。身長:170㎝・体重:65㎏
XSR900 GPのディテールチェック
現行モデルのスペック&カラーバリエーション

SPEC.●全長×全幅×全高:2,160×690×1,180(㎜)●軸間距離:1,500㎜●シート高:835㎜●車両重量:200㎏●エンジン種類・排気量:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒・888cm³●最高出力:88kW(120ps)/10,000rpm●最大トル ク:93N・m(9.5kgf・m)/7,000rpm●燃料タンク容量:14L●燃費(WMTC):21.1㎞/L●タイヤサイズ:F=120/70ZR17・ R=180/55ZR17
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